🏥 入院

臨床推論 入院患者編

初期研修医向け / 経過を構造化する思考

問題リストは「何を治しに来たか」だけでなく、「この患者に起きていること全体」を捉えるもの。
問題リストの作り方
問題リスト — 記載例
Active / 主問題
#1 市中肺炎(右下葉)
PSI class IV → 入院適応。抗菌薬開始3日目。
Active / 管理が必要
#2 2型糖尿病
感染を機に血糖不安定。スライディングスケール中。
Inactive / 情報として保持
#3 高血圧症
外来でCa拮抗薬内服中。入院中も継続。

✦ 全問題に番号をつけ、SOAPでその番号を参照する習慣を。

多疾患併存(マルチモビディティ)の視点
問いチェックポイント
相互作用疾患同士が影響し合っていないか?
例:感染→血糖悪化→傷治癒遅延
薬剤負担ポリファーマシーになっていないか?
≧5剤で有害事象リスク増大
患者の優先この患者が最も気にしていることは何か?
毎日のSOAPは「情報記録」ではなく「推論の更新」。昨日と何が変わったかを問い続ける。
SOAP の役割を理解する
S
患者が訴えること。「昨日より楽」「まだ咳が出る」など。
前日と比べた変化を必ず記載。
O
バイタル・身体所見・検査値。
トレンドで捉える(今日の体温より「3日間の推移」)。
A
← ここが推論の核心
経過の解釈:「改善中 / 変化なし / 悪化 / 予想外の経過」
仮説の更新:「当初の診断は合っているか?」
問題別に記載:#1 改善傾向、#2 要調整
P
Aに基づいた具体的プラン。
「継続」も意思決定のひとつ。「なんとなく継続」は書かない。
「予想通りの経過か」を毎日問う
// 3つの問い Q1:この疾患の自然経過はどうのはずか? Q2:治療に対して期待通りの反応があるか? Q3:説明がつかない所見はないか?

Q3に「ある」と答えたとき、診断の見直し・合併症・医原性を疑う。

診断を見直すきっかけ(Diagnostic pause)
急変は突然起きない。多くは6〜8時間前にサインがある。
早期警告スコア的思考(NEWS2 ベース)
パラメータ注意値
呼吸数≧25 / <8 最も敏感な指標
SpO₂<94%(COPD患者は個別設定)
収縮期血圧<90 or ≧220
心拍数<40 or ≧130
意識新規の変化が最重要
体温<35 or ≧39.1

✦ 単一値より「昨日からのトレンド変化」を重視する。

🔴 その患者に今すぐ行くべきサイン
急変時の初動推論(H's & T's)
H's — 原因
  • Hypovolemia
  • Hypoxia
  • Hydrogen ion(acidosis)
  • Hypo/Hyperkalemia
  • Hypothermia
T's — 原因
  • Tension pneumothorax
  • Tamponade
  • Toxins
  • Thrombosis(PE/ACS)
  • Trauma
退院は「治った日」ではなく「在宅・外来に移行できる日」に設定する。
退院基準を入院時に決める
// 入院時に設定する退院目標 臨床基準:[解熱・CRP低下・歩行可能 etc.] 機能基準:[ADL が入院前水準に戻る] 環境基準:[帰る場所・介護が整っている] 教育基準:[患者・家族が退院後を理解している]

「なんとなく元気になったから帰す」は計画的退院ではない。

退院前チェック(D-SAFE)
退院サマリの必須要素
入院理由

主訴・入院時病名

入院中経過

治療内容と反応

退院時状態

バイタル・主要検査値

退院処方

変更点を明示

未解決問題

外来で要フォロー事項

患者への説明

理解度・同意

✦ 「自分が次の担当医なら何を知りたいか」で書く。